5年程前なんだが、婆さんを保護した時が修羅場。
夏の糞暑い時間に家の近所のバス停にへたりこんでいる婆さんがいた。

住んでいる所って、戸建てが20軒程のしかも開発されて数十年の住宅地。
住人も中高年、爺婆がほとんどで、開発当初から住んでいる世帯ばかり。
なので、何処の家の住人かと見てみれば全く見覚え無し。

同じ時間にバスに乗る住人も後からやって来て、同じく首をかしげているが熱中症で倒れられても後が面倒なので一人が思いきってどこから来たか尋ねると、理解不能の返事。

『うわ、呆け婆さんかよ』

と全員げんなりしたが、放置するわけにもいかず警察に通報。
で、やって来た駐在が同じ質問して持ち物も見たが手掛かり無し。
名前だけは言えたのでそれを頼りに照会する。
となったが、

「いやー、まだ保護する事態じゃないのでこちらのどなたかで預かって下さいね」

駐在、あっさりそう言うと住人に身柄を押し付けた。
バスの到着時間も迫っているし(一時間に一本しかない)、休みで時間に余裕があった俺が引き受ける羽目に。

善意で引き受けるのに、駐在が婆さんの倍の時間かけて俺の照会したのが修羅場。
親と同居しているので反発あるかなと思ったら、あっさり許可したのは意外だった。
つか呆けてるだけで非常に大人しくこっちの、

「婆ちゃん、こんなとこ居たらしんどなるぞ。家で涼んでいって」

にくどいくらい礼を言いつつ辞退するという一面も。
駐在には、スマホの録音回しながら、

「預かるだけ、本人が出ていく言って止まらんかったらそれ以上はしない。この条件は飲んで欲しい」

とはっきり言い、渋る駐在に、

「じゃ、本部に直で相談しますね」

とあらかじめ調べておいた本部の該当部署の電話番号を入力した画面を見せて、了承させて、本人と駐在所の名前も問答形式ではっきり言わせた。

婆さん本人は暑さが応えたのか家で大人しくしていて、母親が話し相手をずっとしていた。
修羅場その2は警察から連絡が入ったらしい施設側が連絡してきた時。



俺のスマホに見知らぬ番号が着信してきたので用心しながら出ると、婆さんが入っている施設から。
婆さん、どこかの施設に入っているらしい。
生活相談員だか生活支援員だか名乗る人物が最初に言ったのが、

「お宅がうちの入居者を勝手に引き取っているのですか?」

『あ?』

「こちらは、警察からの要請に基づいて婆さん家で預かっているだけ。拉致ったんだったらお宅の防犯システムに記録残るし警察が要請しないでしょう。で、俺がいつ拉致ったの?証拠あっての発言ですよね?」

ちなみに着信と同時に録音してる。
で、相手慌ててメンバー交代。

今度はちゃんと電話した事情を説明して、状況と婆さんの今の状態を聞いてきたのでざっくり話した。
結局、施設から迎えが来て解決したのだが、迎えに来た時も最初に名乗っただけで以降は黙ったままさっさと連れ帰った。