学生時代、一人暮らししてた時の話。
具体的な場所は伏せるけど、その頃住んでた家は、都内の某大道路沿いから少し奥に入った所にあって、そのせいか家賃が比較的安いのが魅力だった。

学校に行く時は、その道路沿いの道を歩いて駅まで行くんだけど、住み始めてすぐ、変な人がいるなと思うようになった。
週2~3日。

まぁ学校の行き帰りの大体決まった時間しかその道は通らないので、時間が合わなかっただけで、もしかするともっとかもしれないけど。
いつも同じ場所に、バック持ったおばさんが立ってる。

ガードレール越しに、ずっと道路に向かってブツブツ言ってる。
言葉は悪いけど、

『ちょっと頭がアレな人なんだろうな…』

ぐらいに思ってた。
周りの住人は『いつもの事』みたいな感じで、特に気に留める様子も無くおばさんを避けて道を通る。




時々巡回のおまわりさんが、困った顔して話しかけてる姿もあった。
初めの内はチラチラ様子を伺いながら道を通っていたけど、次第に俺も気に留めなくなっていった。

ただ、一つだけ引っかかってた事があって、家から駅までちょっと距離があるから、大雨の日は駅までバスで行ってたんだけど、そのおばさんの前をやっぱ通るんだよね。
バスって高さがあるから、まず目線も合わないので、その時ばかりはおばさんを時々横目で見たりしてた。

俯いてて顔は見えないんだけど、いつもおばさんは左手で傘を差しながら、バッグを器用に左手の空いた指に引っ掛けて、右手をブランと下げてた。
別にそこまで気になる事でもないんだけど、両手で持たないのがちょっと不自然で。

そんなこんなで特に何事も無く、今は就職で引っ越して、そこにはもう住んでいない。
おばさんが幽霊ってオチもなく話はここまでなんだけど、あのおばさん子供と手を繋いでいるんだと思う。
一緒に

「あの車?あの車?」

って、自分の子供を轢いた車をずっと探しているんじゃないかな。
多分なんだけど間違い無いというか、うまく説明できないんだけど、一度だけバスの上からおばさんと目が合った時、何となく理解した。