昔、母から聞いた話。
知り合いのおばあちゃんが、体の調子がおかしいということで病院に行き、何やら検査とかしてて、すぐ終わるはずが長引いて結局そのまま入院した。

当時は肺結核とか多かったから、隔離っての?サナトリウムみたいなところに入院したんだと。
そんなに悪かったのか、とおったまげて、ある日皆で見舞いに行ったとき。

なんかの拍子に、そのばあちゃんと少女だった母以外の皆が別の話に夢中になってて、ぽつんと取り残されたようになった。
母が

「おばあちゃん、大丈夫?」

と聞いたところ、ポツリと

「全然大丈夫じゃないよ…」

との答え。
続けて、

「ここは何かおかしいのよ。検査と言いながら紙に延々と同じ言葉書かされるし、頭に変なものかぶせられて少しでも動くと怒られるし、薬はとても多くて飲むのが大変だし」

少女だった母にはその異様さが伝わるわけも無く、ふうん程度で終わってしまっていた。



そのままさらに2ヶ月ほど入院していたそうだが、ある日ひょっこり退院することになった。
退院したばあちゃんを見て母は衝撃を受けた。
口が開きっぱなしでよだれがだらだら、体は小刻みに震え車椅子、

「きてきてられられますおられますおられますらりらりられ…」

とやたらラ行の多い、意味不明の言葉を繰り返す。
しゃんと背筋を伸ばして身だしなみに気を使っていた当時の姿は微塵も無かった。

どう見てもこれ退院できる状況じゃないだろと思いはしたが、医者の言うことだからと自宅療養?(結局完治していない?)で
引き取ることになった。

その10日後くらいにあっさりと逝った。
スライス盤?みたいなよく切れるでかい円盤状のカッターに自ら飛び込んだのだ。
夫であるじいさんが造船作業員だったから、その工場に入り込んで勝手に機械を動かしたらしいとかなんとか。

その病院も今はすでに無く、当時を知るものも全員鬼籍に入ってしまっているので、もはや真相は闇の中、なわけで。
ただ、あの後何年かして母がふと気になって、当時の電話番号帳?(職業別と人名別の二つあったが両方調べたといってる)や、住所録?を確認したが、どこにもそんな病院の名前は載っていなかったそうだ。