相談ダイヤルがある職場で働いている。
かけてくるのは基本的に弱い立場の女性や子供、老人が多い。

もちろん中には変な人もいるがうちに直通の番号にかけてくる前に、ある程度ふるいにかけられている為ただのイタズラやクレーマーに当たる確率は非常に低い。
応答要員には学生のボランティアも数名いる。
応答の最後に名乗るのが決まり。

ある学生ボランティアへの苦情が複数寄せられるようになった。
地元国立大学の学生で、無口だが真面目な青年だった。
苦情の内容は『嘘だと決め付けられた』『説教された』『罵倒された』等。



応答は基本的に録音しているので、社員数人で聞いた。
苦情の内容は本当だった。
例をあげると

「夫に暴力をふるわれ、逃げたが現在もストーカーされている」

という女性に対し

「嘘でしょ?なんでそんな作り話するんですか。そんなに気を引きたいんですか?」

と、けして声を荒げず(荒げたら周囲にばれる)淡々とほとんど息継ぎなく言い続ける。
嘘だと決め付けない時は

「自殺すれば」
「くだらない悩みですね」

等々。
上司が仰天して青年を呼び出し

「来週から来なくていいから」

と宣告した。
青年はいつもどおりの顔つきでぺこっと頭を下げて退室した。
弁解は一言もなく、表情つ変えなかった。

青年が来なくなってから、同僚が

「実は自分もあの人に同じようなことを言われたことがある」

と打ち明けてきた。
同僚が

「交差点で停車していたら追突された」

という事故に遭い、それを休憩中に愚痴っていた。
同僚がトイレに立ち、人になったところで青年がスっと近づいてきて

「なんでそんな嘘つくんです。どうせあなたが悪いんでしょう。本当のことを言え」

と唐突に責めてきたらしい。
その青年は会話に加わっていなかったし、横のテーブルで黙って座っていただけだったのに急に詰問されて同僚は驚き、その後彼に近寄らないようになっていたという。
彼が何がしたくてうちにボランティアに来ていたのか理解できず、不気味だった。