前に住んでたマンションの話。
そこは階段がけっこう広くて、エレベーターを使わない人も多かった。
俺は12階だったからそんな事はしなかったけど。

で、もうひとつ特徴的なのは、ネコ。
マンション周辺にネコが多い。
もちろん、マンションの廊下なんかにもぞろっと居る。

でもみんな、もう慣れっこなのか、誰も何も言わなかった。
自分も引っ越して今の場所に来るまでは、特に気にかける事もなかった。
ネコの方もかなり人間慣れしていた。



で、ある日をそのネコ数匹が、決まってマンションの下の同じ場所で死んでいる、というちょっとした事件があった。
どうやら転落死のようで、高層階から落ちたようだった。

この一連の事件がおきたのは、隣の人が引っ越していって、すぐに新しい人が入ってきてから間もないことで、今考えるとすごく怖い…ものを俺は見ていた事になる。
新しく入ってきた人の部屋の前にあった、透明なプラスチックっぽい板の事。

ネコの餌が入った袋。
恐らく、もう空なのであろうそれは、かなり乱雑に開けられていて、カッターか何かで切られたように、ずたずたになっていた事。

そして、すぐ近くの友人のマンション(といっても本当に隣)から、一度だけ見た、俺のマンションの縁から、空中を歩くネコの事。
最後に挙げたのは、何故か目の端にしか移らなくて、すぐに友人としゃべり始めたからよく見ていなかったが、その数分後を見なくてよかったと思う。

マンションに帰ると、やっぱりネコが死んでいた。
人だかりが出来ていて、俺は、さっきのネコなのかな、と軽く思ったぐらいだった。

ネコなんてそこらじゅうに居たから。
その後もちょくちょくそういうネコの変死はあった

やがて引っ越した(といっても隣の駅に)俺だが、その友人が衝撃的なことを教えてくれた。

「お前の隣に住んでたやつな、捕まったぜ。」

話を聞いてみると、その隣人は透明なアクリル板を、マンション壁の外側に突き出るように固定させ、その先にネコのエサを置いていたらしい。

それが発見されたのが俺が引っ越してからすぐのことだった。
ちょうどネコが餌を食べているアクリル板を、揺らしているところだった。

そしてネコは転落。
奴は通報され、捕まったとの事。

アクリル板を揺らしていたその顔は、実に気味の悪い『ニヤニヤ笑い』だったとか。
俺があの時見たすべてのものが、あの一連の事件にかかわっていたのだ。
今でも思い出すと、薄ら寒くなる。