うちの学科(大学の)は地質系で一人で地質調査すんのよ。
範囲は約10km四方。
当然山あり川あり熊もいる。
で、友人のG君の話なんだが…。

よく晴れたある日、彼はいつもの如く沢を登り、露頭(地層が見える地肌)がありそうな所を探して藪コギをしていた。
背丈(約165cm)を越える雑草どもに辟易しながら進んでいくと突然藪が終わり、眼下に田園が広がった。

一息ついて辺りを見ると、驚いた表情のおばさんが一人いた。
無理も無い。

いきなり藪から鉈を持ったゴツイ男が現れたら誰だって驚く。
彼は言い訳を考えながら話しかけようとすると

「おめぇ、あにしてらぁんだ?すったらどこで?(あなたはこんな所で何をしているんですか?)」

と聞かれた。
彼は事情と素性を答えた。



おばさんは

「んだが。(そうですか。)」

と答えた後こうつないだ。

「昨日、○○で熊っコでてぎでらからおめも気ぃつけれや。(昨日○○で熊が出没したから気をつけなさいよ)」

彼は驚いて

「え!?見たんですか?」

と聞き返した。

「んだ、藪ん中ゴソゴソする黒いの見づけて猟友会呼んだどもいねくなってたど。」

彼は詳しく場所を聞いた。
おばあさんの言うエリアは調査地域で、ちょうど昨日調査に入っていた辺りだったからだ。
そして話を聞けば聞くほど彼の顔は青ざめたそうだ…。

「その熊らしき物は多分俺だ。あの日あの時間、あそこにいたしあの日は黒い服着てたんだ…。もしあのままもう一時間位調査していたら俺は今頃…。」

ずんぐりむっくりな体を一度ぶるっと震わせた後、彼はその恐怖の余韻に浸っていた。