数年前の夏、実家に帰省中に兄に誘われて山に登った。
そう高い山でもないし、小中学校の遠足で散々登った地元の山だ。

兄も私も登山は素人。
Tシャツとジャージに弁当程度の軽装で挑んだ。

山頂の神社でお参りしてから山を下る。
行きとは違うルートだ。

だが道は二つあった。
どちらも同じような規模の道。
兄が私に

「どちらかを選べ」

と言うので、適当に選んだ道を下りる。
その道は、途中で道と呼べるものではなくなった。




何故か瓦礫のような石の散乱する斜面を、滑りながらも必死で下りる。

『まさかこんな所で遭難なんてしないよな』

と思い始めた頃、ようやく道らしきものに出会った。
安堵に胸をなでおろしつつ進む。

と、川の下流の藪の中に、場違いな鳥居を見つけた。
下は白かっただろう塗装の剥げた、朽ちかけた小さい木の鳥居。
何でこんなものが。

道はどんどん歩きやすくなっていく。
明らかに整備されている。
道の傍に立て看板があった。

「行者以外の当山道の使用を禁ずる」

…行者?
やばい雰囲気を感じつつもとりあえず下る。

壮年の男性とすれ違う。
物凄い目で睨まれた。

川沿いになおも下る。
川の中に忽然と不動明王像が立っている。
何でだ。

更に下る。
もう一体の仏像をスルーしつつどんどん進む。

山道の出口だ。
喜びに足どりも軽く道を抜ける。

そこにあったのは小さな駐車場と、人気のない殺風景な二階建ての建物。
たてもの脇に座っていたおじいさんに睨まれて、そそくさと敷地から出る。
振り返って見上げた建物の看板には、

「○○教××支部 修行場」

とりあえず走って逃げた。
もう二度とあの道は行かない。