元妻とは高2のころから付き合い、4年後に結婚した。
俺たちが結婚して1年くらい経った頃、親父が実親から相続した家をリフォームするため業者に依頼した。

業者が現地調査をした結果、土地が結構広いので、建て替えるなら賃貸マンションにすれば良いと提案した。
家賃収入の6割が返済で、残り4割は不労所得になるので、両親はその提案を取り入れた。

ローンの名義人は親父だったが、当時50代半ばだったので、連帯保証人は俺になった。
マンションは無事に竣工したが、工事中に景気が悪化したため、入居者はなかなか埋まらなかった。

それから半年後、親父は体調を崩して入院し、自営の仕事を廃業してしまった。
親父が入院して2週間後、突然妻が実家に帰ってしまった。
そして、義父親から

「娘と離婚してくれ」

と一方的に言い渡された。
理由は、

「莫大な借金を背負わされた君には、とても娘を幸せには出来ない」

とのこと。
俺は妻とちゃんと話し合いたいと言ったが、取りつく島もなかった。

それから3か月、妻とは結局最後まで話し合うこともなく、おれは半ば強制的に離婚届のサインをした。
慰謝料の請求は無かった。
元妻は、婚姻期間が短かったのと、借金がある俺には支払い能力が無いと思ったからだ。
そんなことよりも、ただただ、早く俺と縁を切りたいようだった。



しかし、実はマンション建築費のローン支払い開始は、竣工から1年後だった。
これは銀行側が、家賃収入を回収できるのは、最低でもその期間が必要だと判断したためだった。

それに、確かに親父は自営を廃業したが、顧客には退院後には同業種に再就職する旨は伝えてあった。
親父は体調が回復した後は、元の顧客をもって同業種に就職し、安定した収入は確保できた。

マンション完成前に住んでいた家の売却金を頭金に入れ、親父の退職金で繰上返済したので、ローン期間は思ったよりも短かった。
結局のところ、ローンの支払いに苦しんだことは一度もなく、去年無事に完済した。
元妻が心配したことは全くの杞憂だったが、離婚してからは15年経っていた。

俺は元妻と離婚してから3年後、仕事を通じて知り合った女性と結婚した。
俺の両親とは、違うフロアだが同じマンションで住んでいるので、半2世帯住宅のような感じ。

今の妻と両親は仲が良く、むしろ俺より妻の方が可愛がられている状態。
子供は2人生まれて、5年前に定年退職した親父とも毎日仲よく遊んでいる。
もう、俺を捨てた元妻のことなど綺麗サッパリ忘れていた。

ところが去年、ちょうどローンを完済した1か月後、突然元妻から連絡があった。
元妻が実家に帰って以来、俺がかけてもずっと着信拒否された番号だったが、末尾の語呂が良いので覚えていた。
今更何の用だと思ったが、何度もしつこく着信があるので出てみることにした。
元妻の要件とは、

「借金の返済は無事に終わったのか?」

完済したのなら、

「そろそろ復縁して一緒に暮らしてあげても良いわよ?」

だった。
俺は元妻が言ってる意味が解らず、なにか亡霊を見たような気がした。

「いやいや、俺は今更オマエなんかと会うつもりなんか全くない」

と伝えた。

「そもそも一方的に俺を捨てて、今まで音信不通だったクセに、よくもそんな自分勝手なことを言えるな」

と。
しかし元妻の言い分は、

「あのまま結婚していたら、アナタはきっと私を頼ったはず」

だから、

「アタシが離れたら、アナタはきっとアタシと復縁するために頑張ると思った」

それに、

「夫婦なんだから、そんなことは話し合わなくても、アタシの本心は解っているはず」

それが証拠に

「アタシが思った通りアナタはちゃんと頑張ってくれたじゃない」

だと。
しらんがな。
すると、

「離婚って言ったって、復縁前提の離婚なんだから、いつでも元に戻れるのよ」

と言い出す。
一瞬、そんな法律があるのかと考えてみたが、確か離婚届の【その他】の欄は空白だったはずだ。
俺は、

「もうすでに再婚済みで、子供も出来ている。復縁するなどロシアの北方領土返還よりも有り得ない」

と言った。
元妻はしばらく俺を罵っていたが、俺が終始無言のままでいるとガチャ切りした。

それ以来、毎日のようにジュリメが届いたが、俺に接触してくることは無かった。
今年になってからは、月に1度くらいの周期でメールが来たが、この3か月は来なくなった。