アパートで一人暮らしをしていた時に、自分の下の階の住人がヤバかった。

「ふざけんな!!!!てめぇ!!ドスドスうるせぇんだよ!」

鬼のような形相で、家に怒鳴り込んでくる。

「眠れねぇよ!下の迷惑も考えろッ!」

掴みかからんばかりの勢いでまくしたてるんだが、家にいるときはゴロ寝で本ばかり読んでたし、間違ってもドッタンバッタンしてない訳で合点がいかなかった。

でも、相手は怒り狂っているし893系の風体の人。
人間として怖いので、合点がいかないながら、いつも謝罪してはどうにか帰ってもらっていた。

『神経質な人なのかな…』

そのうち、彼が怒鳴り込んでくる事がなくなったかわりに、妙な

「ドスッ!ドスッ!」

という音が聞こえてくるようになった。
その音は床からだった。




階下の住人が、何かを天井にぶつけているに違いない。

「うるせーのはそっちだろ!」

と言いたいところだったが、

『…これはもしかして、仕返し…?』

なんか気味が悪くなって、どうしようと悩んでいたところ、階下の住人が唐突に逮捕された。
町で知らない人を殴ったというのが理由だった。

彼は重度のシャブ中で、かなり精神を病んでいたらしい。
うるさいというのも幻聴・幻覚の類いだったに違いない。

そして、大家が教えてくれたが、ゴミで散乱した室内にアルミの棒に出刃包丁をくくりつけた即製の槍があって、それで執拗に天井を突いていたらしい。
天井は板や梁がすっかりえぐれ、クレーター状の穴になって

「もう少しで自分の部屋の畳が見えるところまできていたらしかったそうです」