カメラマン志望の学生だった私は就活に難航して、『劇団の舞台照明スタッフ募集』という求人に応募した。
畑違いとはいえ照明機材も触った事はあるからだった。
劇団に行くと、面接官の団長が面接早々

「この業界は働くんじゃなくて修行させてもらってるって意識が必要だ。最初の1年はほぼ無給で修行してもらうけど、君には覚悟はあるか?」

といったことを言う。

『裏方にもずいぶん厳しいんだな』

と思い、聞いていると

「稽古に残業代は出ない」
「演技の経験はあるのか」

とか、話が段々おかしくなっていく。
そこで私は団長が

『私を役者志願者と勘違いしているんだ』

と思い、自分は技術スタッフを志す人間であること、表舞台に出るつもりはないことを伝えた。




でも団長は私が照明志望だと知っていた。

「うちの劇団はみんな家族だ。裏方も役者も関係なく、みんな舞台に出る。むしろ照明の仕事はほぼ外注だから殆どないよ。君が照明志望で応募してきたのはもちろん知っているが、本当は当然舞台に出たいんだろう?だからうちに応募してきたんだろう。」

私も反論。

「舞台に出るのが必須とは求人項目に掲載されていませんでした。私は技術スタッフを志しているので、ご期待に添えないのでしたら今回は申し訳ありませんが辞退させて頂きます。」

すると団長が急に焦りだし

「この世界を志しているのに晴れ舞台に出たくない人間なんているはずがない」
「うちの舞台を1度でも見れば素晴らしさがわかる」
「私達は家族だろう」

と私を引き止め始める。
しかもいつの間にか家族認定されたw

それで結局出口も塞がれてるし、断り続けて40分。
あんまりしつこいんで

「実は私はストーカーに追われて地元を逃げたんです!だから舞台で顔を出したりSNSに写真が出たら、あなた方にも危害が及ぶかもしれません!」

と嘘をついて逃げた。
それでもその後半年ぐらい時々メールが来てた。

結局それで舞台業界全体にドン引きして、今は幸いカメラを扱う仕事に就職できました。
今思えば何だったんだろう。
団長の目がヤバかったし新興宗教かと思った。