一時期だけ住んでた団地であった話。
たぶん3年前くらいだったと思う。

当時住んでた団地は玄関が向かい合ってるタイプで、周囲の家(部屋?)の音はよく聞こえてた。
下の階のカナキリ声とか、上の階のガラスの割れる音とか結構よく響いてた。

だけどお隣さんだけは結構静かだった。
というか生活音がなかった。

でも朝になると、小さい女の子がランドセル背負って学校いってたから住んではいたと思う。
ちなみにその女の子なんだけど、すごく身なりも顔立ちも仕草もキレイな子だった。

『成長したら美人になりそうだなぁ…』

って見かけるたびに思ってたわ。

あるとき仕事終わって家で暇つぶしにネットしてた時、隣の家の玄関で急に歌声が聞こえてきた。
ヘッドフォンしてたからいつから歌ってたか知らないけど、女の子の歌声だった。

『お隣の女の子かな?』

なんて最初は気にしてなかったんだけど、外は真っ暗だし、気づいてから1時間以上歌ってて不安になってきた。
でもさ、不安になるのはそれだけじゃなくて、その歌のほう。




よくよく聞いてみると、一小節ごとくらいに家の扉をゆっくり

「ダーン」

って閉めて、また一小節ごとくらいに家の扉をゆっくり

「キィ」

って開けてる音だった。
団地の扉って結構しっかりした金属の扉だからわりと響いてた。

一度気になったら確かめたくなるもんで、俺は静かに玄関の覗き穴から見てみた。
そしたらやっぱりお隣の子で、歌っては外に出て、歌っては中に入ってを繰り返してた。

しかも延々と笑顔で楽しそうに繰り返してた。
見るんじゃなかったなぁーって後悔したくらい、本当に不気味で本気で身震いしたの覚えてる。
もしかしたら気づいてなかっただけで、今までもずっとしてたのかもしれない。

それも日が変わるまで続いてた。
日が変わって音が鳴り止んでホっとしたけど、やっぱり気になって女の子の様子を覗いたんだ。
さすがにもう女の子は居なくなってた。

それからちょっとして仕事帰りにウチの家の前に救急車が止まってた。
どうしたのかなって野次馬の話を聞くと、お隣さんの母親が扉の下敷きになったらしい。

頭をかなり強く打ったらしくて、娘さんが救急車を呼ぶまで下敷きだったんだと。
担架で運ばれる母親に付き添うお隣の子の振る舞いは、怖いくらいキレイだったよ。