知り合いの話。
まだ学生だった頃のことだ。

彼が違法駐車をして車を離れ、しばらくしてから戻ってくると、自分の車の下から人間の足が飛び出していた。
周りのアスファルトが赤黒く汚れている。

吃驚して覗き込むと、それは人ではなく、精巧に造られたマネキンだった。
何か重い物に踏まれたのか、頭が半分潰れている。
赤黒い液体も、血ではなくて何かの塗料のようだ。
シンナー臭い。

「誰の悪戯だよ、タチが悪いな!?」

そう怒ったものの、違法駐車をしていた自分も決して褒められたものではない。
マネキンを車の下から引っ張り出し、邪魔にならない場所に退けると、そこを後にした。




おかしなことになったのはそれからだった。
彼が路上駐車をする度、必ずマネキンが車の下に放置されるようになったのだ。

頭が潰れていたり、胴が抉れていたり、腕や脚が千切れていたりと違いはあったが、毎回同じように事故を模していた。
幾度も隠れて見張ってみたが、その時には悪戯はされない。
油断して車から離れた時に限って、マネキンが出現したという。

すっかり根負けしてしまい、彼は違法な駐車をしないようになった。
以来、不気味なマネキンも現れなくなったという。

そしてつい最近の話。
久し振りに、彼と再会する機会があった。
話が弾んでいると、途中でこんなことを言ってくる。

「そういや、あのマネキンストーカーの話を憶えてるか?俺の車の下で、事故者の格好させてたって奴」
「憶えているよ」

と返すと、続けてこんなことを言う。

「アレがまた出やがった。この前、女房の実家へ里帰りした時だよ。一寸の間だけ路上駐車したんだけど、車を実家へ移動させようと戻ってみたら、昔のようにマネキンの足が突き出していやがった。だあぁー!しつこいよ、一体誰なんだよ、何がしたいんだよ!?」

彼はそう言って頭を掻き毟っていた。

「……まぁ、路上駐車は出来るだけ止めた方が良いね」

私にはそう言うことしか出来なかった。