友人の話。
彼は小さな山間の町でコンビニを経営している。

店には季節の変わり目、必ず真夜中に訪れる常連の客がいるという。
その客は背が高く、いつ来ても同じ服装を着込んでいる。

見た目はごく普通の人だが、いつも大きなマスクと帽子を着けているので、どのような顔をしているのかはよくわからない。
深夜にもかかわらず、毎回大きなサングラスをかけているのも少し気になる。



加えてまるで農作業したばかりのような、優しい土の匂いがするのも奇妙だ。
決まってミネラルウォーターのペットボトルを二本、米を一キロ、炒り子を一袋、そして塩を一瓶購入する。

商品を手提げ袋に納めたその客は、店前の県道を横切りガードレールを乗り越え、休耕田を突っ切ってから、深い竹薮の中へ消えるそうだ。

『あの奥って確か、寂れた御社以外は何もない筈なんだけどな。』

そうは思うものの、お客ということには間違いない。
だからあまり深く考えないようにしているのだという。