もう4、5年前くらいの話。
当時小さいお菓子メーカーに勤めてて、企画とかデザインとか一人で何でもやるような会社だった。
もちろん、上の承認とかは必要なんだけど、比較的自由に仕事できてた。
給料安かったけど。

地方だったから家と会社が近くて、お客さんと打ち合わせに使ってた喫茶店とか、プライベートでもよく行ってたんだよね。
単純にコーヒーがうまくて。

日曜だったから、色々家の掃除とか洗濯とか済ませて、やることもないしビデオ屋でも行こうと思ったんだ。
ビデオ屋って本も売ってるから、その日はビデオも借りて本も買ったんだよ。

そんで、帰りがけに喫茶店で本でも読んでアンニュイな休日を過ごそうと思ってたわけ。
いつものようにカウンターに座って、コーヒー注文して本読みながらダラダラしてたら、自分から1つ空席挟んで2つ隣の席に別の客が来たんだよ。
女の人っぽかった。

男ならわかると思うけど、近くに人が(女性が)来たら、ちょっと美人か確認するのに見ちゃうよな?
そしたら、見るからにおかしそうなやつで、すげー痩せてて服装はよく覚えてないんだけど、帽子を深くかぶってて、目元は見えない。




げっそりしてて色も病的な感じに白かった。
一番やばいのは手で、ささくれとかたまにできるじゃん?
それをたまに引っこ抜いちゃうことはあると思うんだけど、ほぼすべての指がささくれを剥きすぎてて、血も出たりしてた。

多分だけど、たまたまできたささくれを剥くんじゃなくて、意図的にその辺の皮を毟ってる感じだった。

『うわーっ…』

と思って、あんまり横見ないようにすぐ小説に目を落してたら、隣もコーヒーかなんか注文してたみたいで、まぁ外見はやばいけど、コーヒーぐらい普通に飲むわな。
と思って、俺も気にせず小説に没頭してたんだ。
15分くらいしたら、なんか横から笑い声が聞こえてきて、

『なんか嫌だなぁ…』

と思いながらチラッと見ると、すげー指の辺りの皮を毟ってんだよね。

「フフッ…フフッ…」

って笑いながら。
ゾーッとして、もう帰ろうと思って、一気にコーヒー飲んだら、小さいカスみたいなのが口の中に入ってきた。
驚いてそのカスを掌に出したら、指の皮だったんだよね。

隣の女が俺のコーヒーに指の皮入れてたんだわ。
気持ち悪さとすっげーむかついたのもあって、女のこと睨んだら、虚ろな目で

「フフッ…フフッ」

って笑いながら指の皮剥きながらこっち見てんだよ。
俺が睨んでるのわかると、にやーっと笑いながら。

「おいしい?ねぇ、おいしい?」

って聞いてきて、

『関わっちゃまずい』

と思って、お代払って速攻車乗って家に帰った。
それ以来コーヒー飲めなくなっちゃったよ。