私が出会い系サイトを常習してたのは、学生時代です。
田舎からひとり都会に出てきたばかりで、とにかく寂しくて友達が欲しかったのです。

『出会い系サイトを利用するなんて…』

最初はそう思っていましたが、掲示板への書き込みをしている人たちは私と同じ年代の人ばかり。
そうそう怖い目に合うこともないだろうし、話し相手になってもらうだけなんだから。

そんな気持ちで入学してすぐの5月くらいからサイトの利用を始め、大学の授業の合間にもちょこちょこサイトをのぞく日々が続いていました。
とはいっても、あまり自分から積極的に人に話しかけられるような性格ではなかったので、最初は私のプロフィールを見た男性がメールをくれるのを待っていただけでした。

それほど詳しいプロフを書いていたわけでもないのに、すごい数のメールが来るんですよね。
驚きつつもそんなメールを見ているだけで、

『私と話をしたいって思ってくれている人がこんなにいるんだ!』

と思うと、どんどん出会い系にハマっていきました。

しかし、メールの数が多いと、中には不快なものも混じっていました。
卑猥だったりバカにするような口調だったり。
次第にそういった文章を読むのに疲れてきてしまい、もう退会しようかなと考えていた頃のことでした。

初めて私の趣味について触れたメールをくれた男の人(Kさん)がいたんです。
7月くらいのことだったと思います。

私の趣味は読書。
ミステリー小説が大好きでした。
だから、プロフにも一番好きな本を挙げていましたが、だれもそこに対するコメントはくれなかったんですよね。
だから、Kさんが何人かの好きな作家を挙げて、

「趣味が合いそうだね」

って言ってくれたときは、自分でも驚くくらいテンションが上がってしまいました。

それからは、毎日のようにメールを交換するようになり、直アドや電話番号も教え合って、夜中に長電話をするようになりました。
Kさんが住んでいるのは隣の県でしたが、メール交換を始めて2か月後には直接会う約束をするようになったのです。
Kさんは

「自分の容姿には自信がない」

と言っていて、直接会うまで写真も見せてくれませんでした。
でも、実際に会ってみると、確かにイケメンとは言えないにしろ、清潔感のある大人の男性って感じで、少なくとも私は嫌な感じはしませんでした。

芸能人で言うなら、佐藤二朗さんみたいな顔。
34歳と言っていましたが、30代後半くらいに見えました。
女性慣れもしてなさそうでした。

一度だけ、私がKさんの住んでいる街に遊びに行ったときも、連れて行かれたのはゲームセンターとかラーメン屋さんとかで、あまりおしゃれなお店は知らないようでした。
食事に行けば半分はおごってくれましたが、一風堂のラーメン900円とか、アミパラでUFOキャッチャーをするのに500円出してくれたりとかその程度。

ただ当時の私は、自分の話を聞いてくれて、優しく自分を肯定してくれる人がいる、それだけで舞い上がっていたんです。
大人の男性らしい落ち着きで、まだまだ考えの幼かった私を包み込むように優しくしてくれていたKさん。

そんな彼が変わったのは、10回目のデートを終えた頃からでした。
Kさんとはキスはしていたものの、そこ止まり。
もうお付き合いはしているような状態でしたが、それ以上の関係になるのはためらっていたような状況のときです。




ある日、記憶が間違っていなければ9月の半ばでした。
デート中二人で街中を歩いていたときに偶然友だちと会ったんです。
友だちといっても学科が同じだけの薄い付き合いの人で、だから私は彼女に

「彼氏とデート?」

と聞かれたときにもつい

「そんなんじゃないよ~」

と言ってしまいました。

そうしたらその後から彼の機嫌は急降下。
何度も謝りましたが許してくれず、夜になって駅でお別れするときにもう一度謝ってみたものの、外だというのに頬っぺたを思いっきり叩かれたんです。

今までの穏やかさはどこにいってしまったんだろうという彼の表情を見て、すごく怖くなりました。
でも、そのときはまだ、

『私がKさんに対して悪いことをしたのだから怒るのも仕方がない…』

そう考えていたんです。

次にKさんに会ったのはそれから2週間後のことでした。
頬を叩いたことに関しては電話で謝ってくれていたので、私もそのときはもうそんなに気にしてないつもりでした。

その日は私の部屋で映画を観てから食事をすることにしていたんです。
ところが、いつものようにお茶を出して彼の隣に座った瞬間、急に彼がキスをしようとしてきました。

でもそのとき私はすごく嫌だと思ってしまったんですよね。
やっぱり叩かれたことがどこかで納得できていなかったのかもしれません。
電話での話し合いではなくて、きちんと会ってその件について話ておきたいという気持ちがあったみたいです。

「ちょっと待って」

と彼を止めましたが、彼は無理やり私を押し倒そうとしてきます。
だから側にあったクッションを彼の顔に押し付けて、彼から距離をとろうとしたんです。

そうしたら今度はグーで頭を殴られてしまいました。
ああいうときって痛さよりショックで何も考えられなくなるんですね。

今思えば彼も手加減はしていたと思いますが、それ以外にも脚やお腹などをアザが残るほど蹴られました。
必死で部屋を飛び出した後は、もう彼には会っていません。

何度も電話がかかってきましたし、メールもたくさん来ていました。
何度か部屋にも来ていたようですが、幸い鉢合わせになることはありませんでした。

その後すぐに引っ越し、ケータイも変えたため、たぶん今後も二度と彼と会うことはないと思います。